-それは失敗から生まれた‟成功”でした-
‟革友禅”は大阪の下町にある工場で職人が親子二代にわたり
伝統技法を守りながら手作業で染色を施した革です。
友禅染めの始まりは古く、元禄時代(1688~1704)頃から盛んになったとされている、
日本の最も代表的な染色法です。
一つの布の面に世界の染色の中でも類を見ないほどの多彩な色彩を使い‟友禅模様”と呼ばれる
曲線的で簡略化された動物的・器物・風景などの文様を描き出すのが特徴。
その日本が誇る伝統技法の友禅染めを踏まえて染めたものが‟革友禅”です。
ただし、二人が作り出す革は通常の友禅染めの仕上がりとは異なり、素材を蒸した時に起きる
革の収縮を利用した、有機的な立体感が特徴です。
この立体感は薬品を使って作り出すのですが‟詳しいことは企業秘密”とのこと、
しかしこの技法が生まれた経緯は意外にも偶然によるものでした。
「実は当初は、立体感の無い平らな仕上がりになるように染色をしていました。ところがある日、
革にぽこぽこと凹凸が出来て失敗してしまって…けれどそれを見て‟面白い”と言ってくれる人が現れて。
それだったら、今度はこれを作ってみようと思いました」という、失敗がきかけだったそう。
今までは平らな状態が通常として作業していた為‟あの時なぜ失敗したか”が分からず、
そしてその‟失敗”を再現することは非常に難しかったそうです。
それでも何度も試行錯誤を繰り返し、ようやく見つけたのが今の技法でした。
そうしてこの独特な風合いの‟革友禅”は、長い年月をかけ試行錯誤の末に完成された技術であり
この工房だからこそ作り出すことのできる、特別な素材なのです。